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沖縄発のスタートアップ。世界へ挑戦

海外旅行でスーパーやドラッグストアに入れば、見慣れた日本のそれとは大きく違う商品が並んでいます。飲料ボトルというのは形でなんとなく想像できても、ラベルを見てもアルコールが入っているのかソフトドリンクなのかわからない……薬のようだけど、頭痛薬なのか風邪薬なのかもわからない……なんてことがよくあります。現地の言葉を知っていれば説明書きを読めば良いですが、全く知らないともうお手上げですよね。
これは日本に来る海外旅行者も同様です。
今、日本に来る海外旅行者の数は約2,000万人弱(2015年時点)。2020年のオリンピックまでには4,000万人を目指す(観光庁)ということですが、旅行者にとって日本語はとても難しい。日本の商品の安全性や品質に関しては信頼していますが、「欲しいものがどれか分からない」という課題は依然残ります。
でも、日本で色々買いたい旅行者の要望は強く、近年報道された中国人の「爆買」などは、その現れの一つです。この旅行者たちの間で話題になっているアプリが「Payke(ペイク)」です。これはアプリと同名の会社、株式会社Paykeが提供するアプリで、流通している商品にはほぼ間違いなく付いてる「バーコード」をスキャンすると、利用者の母国語で商品情報や口コミを表示してくれる優れもの。

特に香港・台湾・中国では、日本旅行のガイドブックにオススメアプリとして紹介されたり、地元のテレビ番組で紹介されたりと、徐々にサービス規模を拡大し、2017年の4月時点で、登録されている商品情報数は10万商品以上、加盟メーカー企業は600社を超えています。

日本ではまだ知らない人も多いかもしれませんが、海外では着実に存在感が増しているこのPaykeアプリ。実は、2014年に沖縄で生まれたばかりのスタートアップで、現在は、開発拠点を沖縄、営業拠点を東京に構えて事業展開しています。
「Paykeは沖縄発の『スタートアップ』。東京やシリコンバレーでやっているスタートアップに引けを取らない」と話すのは、創業者であり、代表取締役CEOの古田奎輔さん。
沖縄発ベンチャーの企業が世界を視野にビジネスを展開するに至った道のりはどういったものだったのでしょうか? それは古田さんの沖縄移住が一つの大きなきっかけでした。

Payke・古田奎輔・沖縄発ベンチャー企業

Payke・代表取締役CEO・古田奎輔さん

ドアを開けると両側に海が

古田奎輔さんは、生まれ育ちも東京。19歳の時、単身沖縄へ移住しました。

――なぜ沖縄へ移住されたんですか?

古田:
「東京のごちゃごちゃした感じが嫌で出たいという気持ちがまずありました。全国各地を旅して回ったんですが、移住するなら陸続きじゃいやだ、海を超えなきゃ移住したっていう実感がわかないなーと思って北海道か沖縄が選択肢でした。バカンス感のあるところも良いなと思って、沖縄にしました。」

――思い切りが良いですね。

古田:
「沖縄って、暖かいし、のどかで、楽しくやれそうって思いました。まず家を借りたんですけど、部屋から窓の外両側に海が見えるんですよ!しかも目の前は木々の緑。こんなに良い立地なのに、市街地まで車で20分あれば出られるんです。沖縄って最高だな、と思いました。後悔したことはありません」

移住後二ヶ月で貿易事業を始める

――移住後の生活について教えていただけますか。

Payke・古田奎輔・沖縄発ベンチャー企業古田
「移住して、楽しく遊んでました。そしたら、一ヶ月で移住のために貯めたお金を使い切ってしまって(笑)。
稼がないといけなくなったんですけど。沖縄に来て時給600円台でアルバイトするのって、もったいないと思ったんです。どうしても東京の時給と比べてしまって。
もっと自分の能力を発揮して、時間を自由に使える仕事はないかなって探したんです」

それが、移住して二ヶ月目のことでした。沖縄という土地柄、外国人の友人が多くできた古田さんは、このネットワークを使えないかとを考えました。
そして、始めたのが個人での貿易事業。海外に出向いて商品を仕入れ、ECサイトで国内で販売。加えて、泡盛やもずくといった沖縄の特産品を、海外の飲食店へ売り込んでいたそうです。

商品には失われたメッセージがある

貿易事業を通して古田さんが知ったのは、どんな商品にも「ストーリー」や「メッセージ」があり、それが購買意欲に結びつくことでした。

古田:
「海外の飲食店に、泡盛を持っていったらはじめは全く売れませんでした。そもそも誰も泡盛のこと知らないんです。でも、『泡盛ルーツって実は中国・福建省から入ってきて、琉球で独自に昇華したという話があるんですよ。』みたいな話を福建省の人にすると、じゃあ置いてみるか、と話が進む。
また、沖縄のメーカーさんを回ると、商品についてめっちゃ語ってくれるんです。苦労したエピソードとか、うちの商品が他の商品とどこが違うのかとか。そういう話を聞いて商品を買うのって、すごく贅沢な体験じゃないですか。でも、店頭に並ぶ商品からは、そうした情報がほとんど失われてしまっている。すごくもったいない、と思いました。機会損失ですよ。」

こうした経験から「世界中の商品すべてにメッセージを与えたい」と古田さんは、2014年11月、沖縄で株式会社Paykeを立ち上げました。

アイデアは自身の経験から

商品のメッセージを消費者に伝えるため、古田さんが考えたのがPaykeのサービスでした。
外国人観光客に向け、商品のバーコードをスマホでスキャンすると、母国語で情報を表示するアプリを提供することを思いついたのです。

――どうやってこのアイデアを思いついたのですか?

Payke・古田奎輔・沖縄発ベンチャー企業

古田:
「身の回りに外国人が多かったので、日本の商品のパッケージ説明が読めなくて困る、というケースは多く見聞きしていましたし、バーコードの仕組みについては、貿易事業をやっていたときに学んでいました。
僕はもともとITが好きで詳しかったので、だったらITを使えば、やりたいことが実現できるんじゃないか、と考えたというわけです。」

――それでPaykeを立ち上げたのですね。どのようにスタートしたのですか?

古田:
「まずはアプリを作るところからですね。アプリの設計は僕がしたんですけど、開発はできないので。当時周囲にあまりエンジニアがいなかったので、そこは苦労しました。
知り合いのエンジニアに声をかけて、週末を使ってプロトタイプだけでも作ってくれないか、とお願いして。
でも、機能だけがあっても肝心の商品データが無いことには始まりません。最初の一年間は、アプリがまだできていなかったので。こういうサービスが始まりますよ、どうですか、という資料を作って、県内のメーカーにプレゼンして回っていました。いいメーカーがあると聞けば、ジャングルみたいな土地に車を走らせたりもしました」

県内でスタートダッシュ、そして全国へ

――そして、会社設立の約一年後にアプリをリリースされた。

古田:
「はい。その時点で、うちを使ってくださるというメーカーさんはある程度集められていたので、県内でスタートダッシュをかけることができました。
ユーザー数の伸びはじわじわでしたが、下がったことはなく、ずっと右肩上がりです。」

――それから県外、全国へと展開されてきたのですね。

古田:
「知名度が上がってくると、東京や大阪のメーカーさんからも問い合わせをいただくようになりました。沖縄には、200社くらいのメーカーがあるんですが、大体回りきってしまっていたこともあり、サービス拡大には、全国規模の大企業にもどんどん参加してもらわないといけないなと……。それで、 東京に支社を置くことにしました。沖縄から一人で東京に乗り出して、東京で共に働くメンバー集めから始めました。」
2016年6月に、Paykeは東京オフィスを開設。
以後古田さんは東京オフィスに常駐し、沖縄で開発に当たっているエンジニアチームと、遠隔でコミュニケーションを取りつつを進めています。

飛行機代はコミュニケーションコスト

――リモートワークには、色々と難しいことも多いですよね。拠点を移してから、エンジニアチームとの意思疎通にはどのような工夫をされていますか? たとえば、東京のメーカーさんからサービス改善を要求されても、沖縄のエンジニアを同席させるのは難しいですよね。

Payke・古田奎輔・沖縄発ベンチャー企業

古田:
「確かに、お客さんの要望がある時に、技術的に実現可能かどうか判断しないといけないような場面はありますね。ただ、僕はエンジニアではありませんが、もともとITには強かったので、技術をベースにした話もある程度できるんです。それをまとめてエンジニアチームに共有したりしますが、テレビ通話も積極的に使っていますね。日常的な業務に関してはそれで回しています。
ただ、東京の営業チームと沖縄のエンジニアチームとのコミュニケーションは重要ですから、月に1回は飛行機で行き来する機会を作っています。
僕も月に一度は沖縄へ行きますし、沖縄にいるCTOにも東京に来てもらいます。
『飛行機代はコミュニケーションコスト』と割り切って、惜しまず出す。そこをケチって、将来の売上が落ちることがリスクだと考えています。
でも、夏場はチケットが高いんですよ、観光地だから(笑)。台風も来ますしね」

海外での拡散

――営業チームが東京に移ってから、「Payke」はどのように広まっていますか?

古田:
「東京に来てからは、僕はプレゼン大会やピッチコンテストなどのイベントに出て回って、「Payke」の名前を広めています。知名度も上がってきていて、今東京でインバウンドのビジネスをやってるベンチャー、といえばうちの名前が上がるくらい」

――起業家万博での総務大臣賞や富士通アクセラレータプログラムでの最優秀賞など注目を集めていらっしゃいますね。

古田:
「海外だと、この前の春節のとき、台湾・香港・マカオの3エリアでApp Storeの総合ランキング1位を取りました。
日本の会社が海外で一位を取ったのは、確かLINE以来だとか、、、。
Paykeアプリのユーザーは95%が外国の方なので、海外に比べると国内ではまだ知られていません。」

――それはすごい!!どうPRされたのでしょうか?

古田:
「やはり、春節というそもそも日本への旅行が増えるタイミングでうまく旅行者のニーズに乗れたのは大きかったですね。それぞれの地元のテレビニュースや、観光雑誌などに取り上げられました。『日本へ旅行に行くならこのアプリ!』という感じで。海外向けのNHK番組、NHK WORLDでも取り上げられたこともあります。 香港国内でPaykeを紹介するFacebookの投稿が4千回以上シェアされていたり、動画の再生数が80万回を越えた例もあり、SNS上でも広がっている感もあります。
お金を払ってPRしたわけではありませんので、ユーザー目線で良いものを作り続けてきたというのが、認められた一つの結果なのかなと。商品の登録数・スキャン数も、春節が勢いのピークでしたが、その後もユーザー数は伸び続けています」

日本中の会社がぜんぶPaykeを使えばいいのに

――海外進出に際して、予想外だったことはありましたか?

Payke・古田奎輔・沖縄発ベンチャー企業

古田:
「いえ、比較的予想通りでした。個人事業の経験もありましたし。
アプリ内のスキャンランキングを見ると薬や化粧品のニーズが高いですが、これも想定できていたことです。
日本語は難しいので、海外の方だと『この薬が頭痛薬なのか下剤なのかわからない』といった事態さえ割とよく起こるんですよ。
それに、海外では日本の商品がたくさん売られているのですが、実は日本語パッケージそのままのことがほとんどなんです。
日本のパッケージそのままの方がブランドとしての信頼感があって、その方が売れるからなんですが、日本語なので現地の人は当然ながら商品情報が読めない。
Paykeアプリはそういう時にも役に立ちます」

――それは、企業からのニーズも高いでしょうね。

古田:
「そのはずなんです。僕は、『日本中の会社がぜんぶうちのサービスを使えばいい』って本気で思っています。小売もメーカーもみんな。
実は、うちの商品情報のデータベースをAPI化して色んなサービスに連携させています。他のインバウンド系・メディア系アプリなんかでも使えるようにしてます。
オリジナルのアプリをダウンロードしたユーザーとは別に、Paykeの間接ユーザーがどんどん増えていくわけです。そうやってプラットフォームを拡大していく。
最近だと、Paykeアプリ搭載の専用タブレットを店頭に置いている事例もあります。これだと旅行者が、スマホにアプリをダウンロードしてなくても活用できるから便利ですよね。Paykeが注目されてきた結果、こういった新しいカタチでのサービスを実現できるようになりました」

エンジニアなら、家付き・東京水準の給与で沖縄へ

――そうやって色々な展開が重なるとエンジニアチームは大変ですね。

「そうですね。今いるエンジニアはとても優秀ですし、要求によく応えてくれるんですけど、それでも回すのが大変になってきています。どうしても頭数が足りない。
だからもう、東京でいい人を見つけたら、家付きで沖縄でも開発できるようにしています。羨ましいです(笑)」」

――家付きで沖縄! それは素晴らしいですね。

古田:
「はい(笑)。会社で家を借りてあげて、給料も東京と同じ水準で出します。それに、一年とか二年の期限付きで全然いいんですよ。やはり、永住となるとみんなためらうので。
今東京以外の場所に住んでいる方で、沖縄へ行きたいという方ももちろん歓迎です。
僕自身は沖縄が大好きで、将来は沖縄に住みたい、とも思っているんですけどね。」

我々は沖縄発「スタートアップ」

――今後はどのような展開を考えていますか?

古田:
「Paykeは、オリジナルのサービスで世界に挑戦して急成長を狙う企業として作りました。自分たちの目指す世界をどんどん実現していって、その結果、ユーザーと加盟企業さんに喜んでもらう、というスタンスでいます。
我々は沖縄で、『ザ・スタートアップ』をやっている自負を持っています。東京やシリコンバレーのスタートアップにも引けを取らずに今後ともチャレンジしていきます」

Payke・古田奎輔・沖縄発ベンチャー企業

▼お話を伺った方

株式会社Payke
東京オフィス
代表取締役CEO 古田奎輔さん

http://payke.co.jp/

About Author

シフトローカル編集部。UIターン情報はもちろん、地方IT情報についても扱います。

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