自社サービスの次世代版の研究開発拠点。それが、2017年10月にオープンしたアイルの松江ラボが担う重要な任務です。その代表者として島根に赴任したのが、WEBエンジニアの衛藤雅人さん。これから、どんな事業を展開していくのか。そして、島根で感じた人間らしいストレスフリーな生活とはーー。
プロフィール
大阪府出身。滋賀県内の大学(工学部機械システム工学科)を卒業後、京都府内の機械系メーカーへプログラマとして入社。30歳のときにWEB業界へ転職し、WEBエンジニアになる。6年後、WEBエンジニアとしてアイルに転職。2017年、島根県松江市に移住し、新設した松江ラボに配属。同県出雲市出身の妻、5歳の長男、1歳の長女と4人暮らし。
機械系メーカーからWEB業界へ。大手とベンチャー、多彩な経験
ーまずは、これまでのキャリアについて教えてください。
京都府内の機械系メーカーに、プログラマとして入社したのがキャリアのスタートです。主に印刷業界向けにパッケージソフトの開発に携わっていました。もともとWEBの世界に特段関心があったわけではありません。大学(滋賀県)では工学部機械システム工学科に進学し、その流れで機械系メーカーに就職した経緯があります。
その後、ちょうど30歳の頃にWEB業界への転職を決めました。これまではBtoB、いわば”裏側”のパッケージソフト開発を担当してきましたが、もっとダイレクトに一般の人に見られるWEBサイトの制作に興味が湧いてきたからです。加えて、これからの時代を考えたときに、WEBサイト制作をはじめとするWEB系の開発に携わる方が、勢いや伸びしろがあると考えたのも理由の1つですね。
ー最初の転職でWEB業界に入ったわけですが、そこではどんな業務を。
転職先は、京都府内にあるWEB制作のベンチャー系企業でした。社員40〜50人規模の会社です。以前の機械系メーカーは一部上場企業でしたが、次は中小やベンチャー系ならではの勢いや感覚を味わってみたい。そういう理由もありました。ここで、WEBエンジニアとしてCMSやECサイトの開発をメインに6年間過ごしました。
ーその後、アイルに転職されたわけですね。
前職のベンチャー企業でWEB制作を学んだ経験から感じたのは、「クライアントのビジネスを創造するには、受託のWEB制作だけでは限界あるのではないか」ということです。クライアントの価値を創造するためには、マーケティング用語で「O2O」と呼ばれるような、顧客をWEBサイトから実店舗へ誘導し、商品の購買に結び付けるような”リアル”のサービスこそ大きな武器になる。そう思うようになりました。
その点、アイルは「WEB×リアル」に関する様々なシステムを開発しています。例えば、導入実績が5000社を超える販売・在庫管理システム「アラジンオフィス」などの基幹システムを展開しているほか、複数のネットショップの商品登録・在庫・受注・発注・仕入が管理できる「CROSS MALL(クロスモール)」や、ECサイトと実店舗のポイントや顧客情報を一元管理する「CROSS POINT(クロスポイント)」など独自のWEBシステムも自社で開発し、それらを一体的に運用しています。
ーそのあたりが、入社の決め手になったわけですね。
前職ではWEBだけで完結するような、しかも受託制作が売上げの9割ほどを占めていました。一方でアイルは、WEBとリアルをつなげるような基幹システムや、それに付随する自社のWebサービスをもっています。その点が、転職先を探すうえで優先度の高い重要なファクターでしたね。売上構成比も、アイルは基幹システムを軸にしながら、WEBサービスなどによる売上げも少なくありません。そのバランスが、私にとって理想的な姿でした。
それと、腰を落ち着けて働けることも大切にしました。これまで大企業とベンチャーを経験し、それぞれのメリットとデメリットを目にしてきました。前職時代はかなり猛烈に働いていたこともあり、30代半ばという当時の年齢を踏まえ、「次が最後の転職かもしれない」と考えたときに、安定した基盤のある大きな会社で働くことを優先しました。アイルは社員が616人(2018年7月末時点)、売上高も94億1200万円(2018年7月期、いずれも連結ベース)に達し、急角度で成長を遂げています。そのあたりも魅力に感じましたね。
高層タワーから古民家風オフィスへ。働く環境が一変
ー島根に異動になったきっかけは。
アイルでは最初、大阪本社で働いていました。松江ラボへの異動のきっかけは、新規採用を含めた「エンジニア集団の再編成・強化」という事業部の課題を解決するためです。島根はRubyが有名で、IT産業の誘致で盛り上がっていました。弊社のWEBサービスでもRubyを使っていた縁もあり、私自身が新たな拠点として「島根はどうか」と提案したところ、結果的にそれが実現することになったんです。計画したメンバーを代表して、私が赴任することになりました。
ー松江ラボは今、どんな体制で動いているのですか。
私のほかに、大阪本社から異動してきた1人、今年4月入社の新卒社員2人の計4人が常勤しています。松江ラボの役割の1つに、「研究開発」があります。自社サービスに関する次世代版の開発に向けての研究です。そのため、大阪から研究開発に詳しい社員を連れてきました。新卒の社員は、島根大学と松江高専からそれぞれ採用しています。新卒は来春にも1人入社予定です。今後も新卒採用は継続していくつもりです。
ー働く環境として、松江はどんな場所ですか。
大阪本社に勤めていた頃と比べると、環境は一気に変わりましたね。まず、オフィスの雰囲気です。大阪時代は中心部にある高層タワーの34階にいましたが、今のオフィスは松江城の近くにある木造の古民家風オフィスです。落ち着いて仕事ができるので、非常に気に入っています。
何より、松江は時間の流れが緩やかですね。人通りも多くなく、大阪時代に片道1時間強かけていた通勤時間も一気に短縮されました。電車内が混雑することもないですしね。周囲を見渡すと、どうやら6時には仕事を終えている人が多いようで、私たちもだいたい7時くらいにはオフィスを後にしていますね。通勤時間も短くなりましたし、その分時間を有意義に使えるようになりました。
住み慣れた滋賀から一家4人で移住
ー島根での生活に対する不安などはありませんでしたか。
妻が出雲市出身のため、正月やお盆など長期休暇の際は毎年妻の実家に行っていました。ですから、不安はありませんでしたね。それまで家族で暮らしていた滋賀と比べても、生活環境にほとんど違いはありません。
ー奥様はUターンすることになったわけですが、反応は。
私自身が島根に移住したのは、あくまでも純粋に会社としての成功を追求した結果に過ぎません。それが偶然、妻の出身県だったわけです。妻は喜ぶかと思いましたが、意外とそれほどでもありませんでしたね(笑)。すでに滋賀に家を建て、子育てを含めて生活は安定し、愛着も湧いてきたところでしたから。ただ、妻の両親は非常に喜んでくれましたね。妻の両親が近くにいることは、子育てするうえで非常に心強いですよ。
ー実際に島根で生活してみて、どんなことを感じていますか。
特に不便さを感じることはないですね。地方にいても、物販に関して今はインターネットでほとんど何でも揃えられますし。強いて挙げるなら、生活満足度を上げるには車が必須ということくらいですね。
ここでは、人間味あふれる生活ができている。そう実感しているところです。地方ではコミュニケーションの頻度が減るなんてことも言われますが、そんなことなく、むしろアットホームで快適ですよ。都市部で失われがちな素朴で人間らしい暮らしの中で、ストレスフリーな日々を送れています。
AIやIoT、ブロックチェーン…チャレンジングな仕事がある
ー今後の松江ラボの展望を聞かせてください。
現在はまだ、本格始動したばかりの立ち上げ期です。立ち上げメンバーを積極的に募集しながら、5年、10年先も安定した支社になれるような体制を構築していきたいですね。
松江ラボでは今、AIやIoT、ブロックチェーンなどを取り入れながら、「CROSS MALL」などの自社サービスの次世代版を開発する研究を進めています。サービス自体はすでに全国各地のクライアントに使っていただいているものですが、その次のバージョンの開発に狙いを定めています。
同時に、地域振興に貢献できるような取り組みも視野に入れています。例えば、オフィスも近い松江城周辺は、観光地として魅力的なのにもかかわらず、うまくアピールしきれていない印象があります。全国的に増加している外国人観光客を取り込むことは、重要な地域振興策でしょう。それに対して、何か協力できないか。そういったことも考えています。
ー最後に、アイルのPRやUIターン転職を考えている人へのメッセージを。
UIターン転職に迷っている人にとって、「やりがいのある仕事があるかどうか」は重要なファクターだと思います。その点、アイルでは全国展開している自社システムの、しかも根幹の技術開発に関わることができます。たった4人の小集団に見えるかもしれませんが、実は会社の中でもチャレンジングなミッションを任されているんです。都会に行かなくても、野心的な仕事に携われる可能性がある場所。それがアイル(松江ラボ)だと思います。
それに加えて、島根は魚が新鮮でおいしく、高層ビルが少ない。時間がゆったり流れる、ストレスフリーな空間です。都会では感じづらい、人が住む環境として”当たり前のもの”があることへのありがたみに気づけます。一見は百聞に如かず。まずは一度、松江城や出雲大社にでも旅行がてら、遊びにいらしてください。IT系企業もたくさんありますし、みなさんを大歓迎します。
[本記事は、IT WORKS@島根からの転載です]