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Iターンのマトリクスに見る、さまざまな「移住のカタチ」

「エンジニアのIターン」と一口に言っても、その背景や目的、想いなどは人さまざま。これをマトリクスに落とし込んで、ざっくりと大まかにタイプ分けしたところ、こうなりました。

faavo/宮崎/大塚

1.都会の喧騒から逃れたい!「マイナス要素排除型移住」
→人混み、通勤地獄、人間関係、競争社会、高コストな生活費など、都会に住んでいると逃れられないさまざまなしがらみを断ち切ることが目的の移住です。

2.移住してやりたいことがある!「目標追求型移住」
→生活拠点を変えた上で、新たに取り組みたいことや実現したいことが明確になっている、目的遂行型の移住です。

3.人生を気楽に楽しみたい!「ノマド型移住」
→住む場所や生活スタイルを、「そのときの人生の流れ」で楽しんで決める、いまどきノマド型移住です(ただし腕に自信がある前提)。

4.仕事もプライベートも充実させたい!「キャリア型スローライフ型移住」
→仕事の面でも成長、成功したい。一方で生活は環境のよいところでのんびり過ごしたいという、オンもオフも充実させたい型の移住です。

マトリクスのどこにも偏らない「中庸タイプのIターンエンジニア」を発見!!

さて今回ご紹介するのは、株式会社サーチフィールドが運営する地方型クラウドファンディングサイト「FAAVO」のエンジニア、大塚真言さん。2017年1月に、東京から宮崎へIターンしました。

faavo/宮崎/大塚

結論から言えば大塚さんのIターンは「成功」でした。後述するとおり、大塚さんは移住の結果、想定内も外も含めて、プラス要素が日々積み重なっている状況です。ご本人も取材の最後に「僕の場合、幸せなIターンでしたね」という言葉で締めくくったぐらい、うまくいっているのです!!

その要因について考えた時、面白いことを発見しました。

移住マトリックス。faavo/宮崎/大塚さんのケース

大塚さんのIターンを上記のマトリクスで見ると、どこにも偏らない、まったくの中庸の立場でした。つまり思いや動機や目的が、どこかに偏っているわけではない。そしてこの4パターンのいずれの要素も、すこーしずつ持っている。言うなれば「強すぎない、偏らない、まんべんない気持ち」でのIターンだったのです。

この「中庸Iターン」という新しいタイプについて迫りつつ、「幸せなIターンを実現するヒント」を探してみました!

気負わない。気負う必要もない。

FAAVO

地域特化型のクラウドファンディングFAAVO。このサービスの運用は宮崎ブランチが主体となる

大塚さんのIターンの経緯は、極シンプルです。それは昨年の夏のこと。サーチフィールド社が宮崎ブランチを開設することが決まり、移住希望者を募ったので、ハイ行きます、と手を挙げたのだそう。

そのときの心境を聞いて見ると、これまたシンプルな答えが。行きたいと思った一番の理由は「生まれも育ちも東京だったので」。そして「地方に住むって、今っぽいかな、と思うんですよね。本音を言うと(笑)」。そう、大塚さんの想いって、重たくないんです!!

とはいえ、決して軽い気持ちとか、ノリだけで宮崎行きに手を挙げたわけではありません。根底にある大前提はやはりコレです。

大塚さん:
「もともとIT業界で働く意味というのが『場所を問わずに働ける』とか、『その場に行かなくても誰かの支援ができる』という思いがあって。なので、場所という概念は関係ないですね」

この「IT場所問わず」という確信があったからこそ、大塚さんは気負うことなく、可能性に満ちたチャンスの扉を開くことができたのです。

思わぬところに転がっていた「きっかけ」

faavo/宮崎/大塚

大塚さんは大学院卒業後、大手のエスアイヤーにて3年間就業。その後縁あってサーチフィールドへ。現在はFAAVOの運用保守を担当し、決済関係の新機能追加や仕様設計をメインで行っています。働き方は業務委託契約という形を選択し、現在はエンジニアとして幅を広げるため、個人的な活動をし始めた段階なのだとか。

これから宮崎で、エンジニアが集まるイベントや勉強会を自分で開いていきたい、と語る大塚さん。しかしそのような思いになったのは、実は宮崎に来てからなのだそう。

大塚さん:
「僕はそこまで、勉強したいとか、スキルを上げたいっていうのは、多分今よりは弱かったのかな、と。宮崎に来て、いろんなことができる可能性があるなと思ってきて。例えばRubyの勉強会だとか、FAAVO以外のこともやれるなっていう可能性が見えてきたから、勉強しなきゃっていう思いになりました」

—-可能性が見えてきたきっかけはなんでしたか?

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大塚さん:
「勉強会に行ったら、エンジニア歴1年2年の人が勉強会の講師をやっていたんです。それってすごいことで、東京じゃなかなかできない。東京だと勉強会に登壇する方って、有名人クラスのスペシャリストとかなので。でも宮崎だと、そういう人でもチャレンジできる環境だということを目の当たりにしました。周りもそれを応援している環境や風土があるのかなと感じて。それを見て勇気もらったっていうのもありますね。だから、自分でもできるんだ、みたいな」

ITは場所は問わないというのは大前提。ただし、所変わることにより、今まで見えなかった自分の可能性を発見する、なんてこともあるわけです。ここで「中庸Iターン」による想定外のプラス要素、一つゲットです!

地方ワークの「コミュニケーション問題」を通して

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東京オフィスと常時スカイプでつながっている。東京のメンバーと会話をする大塚さん。

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一方で、本業であるFAAVO@宮崎ブランチでの業務内容は、東京にいた頃と全く同じだそう。開発の拠点である東京のエンジニア4人と、Skypeやチャットで連絡を取りながら業務を進めています。

–いかがでしょう、やっぱり、仕事をする上で場所って関係なかったですか??

大塚さん:
「はい、仕事の上では何の支障もないです。とはいえ遠隔で4ヶ月、対面していないのはちょっと厳しいかな、というのもあるんですけど…」

ここで出てきたのが、「チームで仕事をする上での、物理的&心理的な距離の問題」です。聞くとなかなか、リアルな課題が浮き彫りになりました。

大塚さん:
「東京で新しいメンバーが増えたんです。今年から、2人入ってきて、まだ僕会ってないんです。お互い多分まだ、どんな人かわかんないんですよね。けど、チャットとかスカイプでしか話せない。そうすると、いろいろ溜まってるのかなー、という思いはあります。例えば飲みの席で話せるかどうかっていう、そこがない辛さはありますよね」

なるほど。となるとやっぱり、チーム内の意思疎通やコミュニケーションは、ツールONLYだと限界がありますか!?

大塚さん:
「相手がどんな人で、クセも含めて知らないと、厳しいなと思うことはあります。仕事のやり方みたいなのが見えないですよね、会って話さないと。例えばチャットだといつでもなげれるからと思って、自分のタイミングでコミュニケーションすると、この人は嫌うとか。あとは、この文面は怒ってるのか怒ってないのかとか、ていうのが難しいところではあります」

基本的に、無駄な飲み会には行きたくないし、積極的に人とコミュケーションを取る方ではないです、と苦笑いで語ってくれた大塚さん。ですがこのような経験が、仕事を円滑に進める上でのコミュニケーションの重要性について、考えるきっかけとなったわけです。

そしていま大塚さんは、自分の時間やペースを大切にしながらも、宮崎での勉強会や交流会へ足を運んでいるそうです。はい、またここでも自分の財産となるプラス要素、ゲットしました!!

縁がない土地に、縁を持つということ

若草通

FAAVOを運営するサーチフィールド社・宮崎のオフィスは、宮崎駅近くの商店街の中にある

オフィスの隣には飲食店。社食のようにお世話になっているという

大塚さんは宮崎に直接的な縁はまったくなかった、といいます。「どこにいてもITの仕事はできる」とはいえ、うーん、もし自分だったらどうだろう?移住できるだろか?と考えてみる小市民の編集部A。気候とか食べ物とか土地柄とか(さらにいえば温泉あるかとか、海はキレイかとかとか、)、なにかもともとその土地に多少なりの興味がないと、厳しいかんじもするのですが…?

大塚さん:
「宮崎は僕はあってます。基本的には休みの日とか、一人でいれるとか。自分のペースを保てるとか。自分の時間があって、自分のやりたいことができている実感があります。自分にもっと気を使えるので、食事にも気を配ったりとか、ジム行ったりとかしてて、気がついたら宮崎来て3〜4キロ痩せたりとか。人やものと距離を置ける分、自分を見るしかない、というかんじ。おかげで健康だし、いろいろな意味で来てよかったです」

ここで編集部A、またまた一つの事実を発見しました!大塚さんの「中庸Iターン」は、「場所ありき」で考えがちな移住の概念を思いっきり覆す、まさかの「場所がどことか、あまり関係ない型」だったのです!!

その土地にまっさらな気持ちで行き、働いて生活する。そして、起こったことや感じたことを享受し、自分のために生かす。結果「自分を見つめる場所」としての、ニュートラルな立ち位置の移住先がそこにある。といったかんじでしょうか。うーん、深い…。なんだか解脱者の域のようにも感じてしまいます。。

とにかく宮崎に来てよかった、と聞けて、なんだかよかった!!

faavo/宮崎/大塚

でもなんだか、せっかく宮崎、気候もいいし食べ物も美味しくていい場所なのに、自分を見つめるだけの場所にするには少しさみしいような。(←俗世間の代表者のような発言をする、編集部A)
というわけで、聞いてみました。…えーと、あまりさみしいとか、思わないタイプですか??

大塚さん:
「時々思います、ふとん入った時とか(笑)」

—笑。でもこれから、行動すればするほど、同じ思いの人が集まって、人の輪ができていくでしょうね!

大塚さん:
「仲間を早く見つけたいですね。最初は自分の中で、とりあえず一年間って決めてたんです。なので3か月後にはRubyをマスターするとか、その3か月後にはどうするとか、一応の予定を立てて。でも勉強会行ったり人に会っているうちに、自分の中での宮崎での成長プランをシフトチェンジをしていると思うんです。インプットだけじゃなくて、アウトプットもしていこう、っていう。あんまり人付き合いを増やしたくないと思ってたんですけど、今はそんなこともなく。これは宮崎に来て、そういう発想になりました。なので僕は、よかったですね、宮崎に来て」

人と土地の縁の形は、さまざまあるのだな、と深く感嘆。大塚さんの中庸が生み出すIターンの可能性は、想像以上にすごーく面白いものでした!!

さいごに

faavo/宮崎/大塚

オフィスに訪れたIT企業などが入り口にステッカーを貼っていくという

こだわらないことの強み。こだわらないことで生まれる新しい意味。今回の取材では、「中庸Iターン」と言う新しい概念とその可能性を垣間見ることができました。

大塚さんはIターンをきっかけに、「狙ったわけではないけれども、結果イキイキと生きて」います。以前には激務で体調を崩されたこともあるとおっしゃていましたが、お話を伺っている時、目が、表情が、キラキラと輝いていました。とても静かで、強いパワーを感じました。いろいろ経験をされてきた人生の流れの中で、きっといまは「史上最高に自分らしく生きている」のだと、おこがましくも感じました。

そんな幸せなIターンを、一人でも多くの人が経験できますように!
Iターン成功のヒントは、「マトリクスの中心部分」にきっとあるはずです。

faavo/宮崎/大塚

お話を伺った方
株式会社サーチフィールド
WAKUSAKA Office
FAAVO事業部 エンジニア
大塚真言さん

ふるさとクラウドファンディング
FAAVO
https://faavo.jp/

About Author

沖縄のクリエイティブエージェンシー・株式会社HUVRID所属ライター。 1974年生まれ。大学卒業後、百貨店勤務を経て楽天株式会社にて楽天市場事業ECコンサルタント、広報職を経験。その後フリーライターとしてコラム執筆や取材記事を多数手がける。同時にフリーランスとして、PRコンサルタント、クラウドファンディングサイト立ち上げ等に従事。 2015年に沖縄出身の夫に帯同し、沖縄へ移住。つまり自身が東京→沖縄のIターン組。 無類の鳥好きで、現在セキセイインコ2羽のお世話係(別名、下僕)。自慢は飼い鳥に関する獣医用の専門書と文献のコレクション。個人で「インコメディア」を立ち上げのため、目下奮闘中。 NPO法人TSUBASA認定バードライフアドバイザー2級取得 / ジャパンビアソムリエ協会認定ビアソムリエ(BASIC)取得 / シナリオセンター東京本校・シナリオ作家養成講座修了

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