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「徳島から、世界に通用するサービスをつくりたい」。こう話すのは、徳島県のアプリ開発会社テクノモバイルでプログラマーとして活躍する、坂東勇気さん(38歳)。5年ほど前まで東京のIT企業に勤めていましたが、地元・徳島にUターンして同社に転職。その後、社内ベンチャー企業を立ち上げ、現在は「世界」を視野に入れたサービス開発に熱中しています。目指すは、「徳島発!世界中で1億人が使うサービスを創る会社」です。そんな坂東さんがUターンを決めた理由、そして徳島という「地方」で描くキャリアとはーー。

子育てを考えたとき、東京では不安になった

路上にお囃子(はやし)や太鼓の音が響き渡り、そのリズムに合わせて踊り子たちが体を動かす。約400年の歴史を誇る阿波踊りの季節が、今年もいよいよ近づいてきました。

阿波踊りの本場、徳島県。ここで生まれ育った坂東さんは、就職を機に上京し、地図やゲームなどBtoCのサービスを開発するIT企業に就職。そんなある日、同じ徳島出身の女性と出会い、結婚することに。改めて自分の人生、そして家族の将来を考えたときに、ふとこんなことが浮かんできたと言います。「子育てを考えた場合に、待機児童や共働きなどの問題がある東京では不安になり、お互いの実家がある徳島に戻りたいと考えました」。そして、妻の出産を機にUターンを決意したのです。

徳島から、世界で通用するサービスをーー。そう意気込む坂東さん。

BtoCのIT企業に転職。社内ベンチャーを立ち上げ

ただ、不安がなかったわけではないと言います。まず浮かんだのは「仕事」。そもそも徳島にはIT企業が少なく、特に東京で長く関わってきたBtoC領域を扱う企業に当てがあったわけではありません。ただ、ハローワークのUターン専用窓口に通っていたある日、BtoC系サービスを展開するテクノモバイルの求人を発見。2011年に転職しました。

同社は受託開発を主体とする中堅企業として安定した業績を上げていましたが、坂東さんは次第に「自社サービスもつくりたい」と思うようになり、2年後の2013年に社内ベンチャーのGTラボを設立、代表に就任しました。現在はスマホを中心に、タクシー会社のクラウド型コールセンターや配車システム、国勢調査を利用した出会い占い「国勢調査占い」、iBeacon機能を使って来店促進を図る「きてみてガチャって!」など、数々のアプリを企画・開発しています。

「私の役割はフルスタックエンジニアです。企画から開発、運用、マネタイズまですべてに携わります。Web、スマホアプリ、Windowsアプリ、インフラなど一通り自分でつくれる必要があるため、10種類以上のプログラミング言語と環境を使えるように、最新のトレンドも追うようにしています。また、ITサービスは何が当たるかわからないので 、様々なジャンルのものをスピード感を持って開発しています」

こんな絶景を見ながら仕事をすることも可能です。しかも、ビールが・・・

さらに、そんな坂東さんのワークスタイルにも、地方ならではのメリットが!坂東さんは「ミーティングの有無や気分次第で、出社するか自宅作業か決めている」のだそう。そして、「田舎の家はでかいので、自宅作業が捗ります」とも。こんな柔軟な働き方も、地方の魅力の1つと言えそうです。実際、坂東さんは「満員電車がないのがいい。ストレスがだいぶ減りました」と話しています。

年収400万円で「子ども2人・車1台・持ち家」

東京で身につけた最先端のITスキルを活かし、新たなサービスを次々と開発する坂東さん。こんな働き方に興味を抱くエンジニアにとって、移住先での生活・暮らしも気になるところです。安定した収入は得られるのか、移動は大変ではないのか、そして遊ぶ場所はあるのかだろうか・・・?

徳島といえば、やっぱり阿波踊り。こうした地域特有の伝統に触れられるのも魅力です。

坂東さん自身は、収入は以前と変わらない条件に恵まれ、さらに徳島に来てからは「生活コストが下がった」と言います。「東京では子育てするのに世帯収入700万円は必要と言われますが、徳島なら400万円で子ども2人と車1台、持ち家というのも現実的です」。移住の大きな理由だった育児についても、ショッピングモールのバリアフリー環境が整っているなど充実しており、その分仕事にも集中しやすいと言います。

ただ、不便に感じることや、将来への不安がないわけではありません。その1つが、東京のような都市で遊ぶことができないこと。そのため、高松市や大阪まで出向くこともあるそうです。また、徳島には都心に比べてIT企業が少ないため、「定年まで働けるか、迷いが今でもあります」と率直に話してくれました。

キャリアプランに合わせて、自由に決めればいい

それでも、坂東さんは「徳島から世界に通用するサービスをつくり、定年までプログラマーとして働きたいです」と将来について熱っぽく語ります。そして、定年後は「車の運転が怖いから東京に移住したい」とも。固定概念にとらわれず、東京と地方を自由に行き来しようという、坂東さんらしい人生設計ですね。

最後に、坂東さんに「地方で働くこと」について意見をお聞きしました。「地方の方が課題は多いので、課題解決やシェアリングエコノミー(※)といったサービスを生み出すには有利だと思います。ただ勉強会が少なく、(仕事・開発の)案件も固いものが多いので、スキルに自信のないうちは東京で修行した方がいいでしょう。また、ゲームやアートなどエンタメに携わりたい人も、東京がいいと思います」

自分の思い描くキャリアプランに合わせて、暮らす場所や働く場所は自由に決められる。坂東さんは、そんな未来型のライフスタイル・働き方を徳島で実践しています。

※物・サービス・場所などを、多くの人と共有・交換して利用する社会的な仕組み

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シフトローカル編集部。シフトローカルなメンバーが集まって構成している。

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