ITエンジニア向け転職・就職・学習プラットフォームを運営するpaiza株式会社(東京都港区)がこのほど、福岡女子商業高校(福岡県那珂川市)と教育連携協定を締結し、プログラミング教育の支援などを通じて地域におけるIT人材不足や、男性が多くを占める業界のジェンダーギャップの解消に乗り出しています。両者の協定締結には、どんな背景や狙いがあるのでしょうか。
IT業界は2030年に最大79万人の人材不足に直面すると予測されており、特に福岡県を含む九州地方の企業では情報サービス業の72.9%がITエンジニア不足を感じているとされています(※1)(※2)。さらに、エンジニアには男女比が8:2と大きなジェンダーギャップが存在し、女性のロールモデル不足や、学校教育と業界・キャリアとの溝が深いことも課題となっているそうです(※3)。
ITエンジニアの転職や学習を支援するプラットフォーム「paiza(パイザ)」を運営する同社は、全国の教育機関にIT学習プラットフォーム「paizaラーニング 学校フリーパス」を無料で提供しており、2024年度は高校や大学、専門学校を中心に648校に導入。将来の業界を担うエンジニアの育成に力を注いでいます。
福岡女子商業高校もこの「学校フリーパス」を導入していた学校の1つで、今回の協定締結によってさらに強固な協力体制を構築していくとしています。同フリーパスを活用した継続的なプログラミング教育の支援に加え、IT業界への理解を深め、キャリア選択に役立つ情報提供も充実させる予定。特に女子生徒に焦点を当て、女性のIT分野への進出を強力に後押ししていきたい考えです。
協定の締結に先立ち、7月には同校生徒を対象にしたIT人材育成イベント「ITは私のミライを広げてくれる」を開催。生徒は現役エンジニアの生の声を聞いたり、ワークショップで実際にプログラミングに触れたりすることで、キャリアの具体的なイメージを深めた様子だったといいます。

イベントではpaizaの片山良平社長が講演を行うとともに、AIクラウドサービスなどを手がける株式会社LayerXの女性マネージャーも登壇。自身のキャリアや業務内容、女性エンジニアとしての経験談を披露しました。さらに、同校「AI部」の生徒らによる座談会も行われ、生徒同士でIT学習の意義や将来の夢などを語り合ったそうです。
参加した女子生徒の1人は、「エンジニアは頭がいい人でパソコンをかたかた叩いているイメージが強かったけど、話を聞いて楽しそうな職種だなと思った。IT系は自分に向いてないと勝手に思っていたけど、今回とても興味を持った」と有意義な時間を過ごせたようです。

特に地方で深刻なエンジニア不足と、差が埋まらないジェンダーギャップ。業界が抱える大きな課題に風穴を開ける動きとして、両者のタッグがにわかに注目を集めています。
(※1)「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/daiyoji_sangyo_skill/pdf/001_s02_00.pdf
(※2)「九州企業のDXの現状と政策動向」(2023年12月経済産業省九州経済産業局)
https://lfb.mof.go.jp/kyusyu/content/list/028/miyafo-ramu_kouennsiryou_1_20231219.pdf
(※3)2020年版 情報サービス産業 基本統計調査(一般社団法人情報サービス産業協会)図表2-49
https://www.jisa.or.jp/Portals/0/report/basic2020.pdf