東京から地元・スタートアップ企業へ。キャリアアップ遂げた今…/八雲ソフトウェア 渡部勇樹さん

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東京から生まれ育った町に帰り、キャリアアップもできたならーー。そんな”一石二鳥”をつかみ取った人がいます。八雲ソフトウェア(松江市)に勤める渡部勇樹さん。結婚を機に移住を考え始め、創業メンバーとして同社に入社。スキルを身に付け、今では開発チームのリーダーとしてマネジメントも担っています。どんな道を辿り、今に行き着いたのでしょうか。

プロフィール
1986年、島根県松江市生まれ。地元の高専を卒業後、東京のIT企業にエンジニアとして就職。松江市出身の女性との結婚を機に、Uターンを検討。八雲ソフトウェアに転職し、2014年4月にUターン。システム開発に加え、チームをまとめるリーダーとしてマネジメントも手がける。実家で妻と両親、妹、祖母の6人で暮らす。2018年8月に第一子が誕生した。

スキルアップのため、一度は東京へ

ー地元・松江から一度東京へ出た理由を教えてください。
地元の松江高専卒業後に東京で就職したのは、単純に一度県外へ出てみたかったのと、エンジニアとしてのスキルアップが目的でした。今でこそ島根はIT企業の誘致が進んでいて就職の選択肢が広がっていますが、当時は県内にIT企業がほとんどなく、ITの道で生きていくなら東京や大阪などの都心へ出るのが一般的でした。生活と仕事の両面で、一度は東京に身を置いて、いろいろな人生経験をしてみたかったのが大きな理由ですね。

ー東京ではどういった仕事をしていたのですか。
クレジットカードや損保など金融系企業の大規模な基幹システムを開発する会社に就職しました。社員も100人以上いる大きな組織でした。そこでは客先に常駐して、その場で要望を聞きながらシステムの新規開発、改修を行っていましたね。取引先の多くが大企業だったので、若いうちに大掛かりなシステム設計・開発のプロジェクトに携われたことは幸運でした。新人にもかかわらず、入社間もない頃からいろんな業務経験を積むことができたんです。

組織の歯車ではなく、スタートアップメンバーとして

ーUターンしたきっかけは何だったんですか。
結婚と、キャリアアップが大きな理由です。松江に住んでいた頃からお付き合いしていた地元出身の女性と結婚することになり、Uターンを本格的に意識し始めました。

それと、仕事面でもキャリアアップが必要と感じ始めたんです。前職の東京の会社では「COBOL(コボル)」という結構昔から利用されているプログラミング言語を使っており、新しい言語を習得できるような社内環境ではありませんでした。このままだと時代に取り残されてしまうかもしれない。そんな恐れを感じていたんです。エンジニアとしての今後の成長を考えると、やはりWEBアプリケーションの技術なども身に付けたい。そうやって転職を考えるようになりました。加えて、毎朝の通勤ラッシュや夜遅くまで忙しく働く生活が続き、徐々に精神的にすり減る感覚も嫌でしたね。

ー転職活動はうまくいきましたか。
ただ、先ほど言ったように”島根にはIT企業がない”という昔の記憶が残っていたので、最初は「農業でもやろうかな」と考えたりしてました。実際、都内で開催された島根県の農業関連の転職イベントにも参加したほどです。ただそのときに、公益財団法人ふるさと島根定住財団の存在を知り、コーディネーターに話を聞くと「今はIT企業の求人がある」と言われました。今まで経験を積んできたエンジニアとして働けることは、非常に魅力的でした。その後、財団を通じてIT関連の求人情報を紹介してもらうようになったんです。その1つが、八雲ソフトウェアでした。

ー八雲ソフトウェアを選んだ理由は。
当時、八雲ソフトウェアはスタートアップの段階でした(2013年2月設立)。その頃島根には他にもIT企業が進出していましたが、いわゆる東京に本社を置く企業の”支店”のような位置づけのケースが多い印象があり、純粋に地元発でゼロから起業するような会社は珍しく感じたんです。

前の会社ではあくまで”一従業員””歯車”のような存在でしたが、設立当初のスタートアップメンバーとして会社をつくり上げていくところから経験でき、より責任のある仕事に携われるのではないか。八雲ソフトウェアには、そんな期待を感じました。

島根出身の当時の社長(現会長)の心意気にも強く惹かれました。人口減少や過疎化が進む中で、UIターン者を積極的に雇用し、会社とともに地域を活性化させたいという思いを強く持っていたんです。さらに、前職では扱っていなかった言語として、島根では有名な「Ruby(ルビー)」を使用していたので、スキルアップにも役立つと考えました。

設立当初のメンバーは私を含め4人でした。組織の規模や仕事内容を含め、環境は大きく変わることになるわけですが、不安よりも「やろう」という高いモチベーションで溢れていましたね。

開発+マネジメント。仕事の幅広がる

ー八雲ソフトウェアのサービス内容を教えてください。
情報システムやソフトウェアのニアショア開発を基本方針としていて、製造業向け生産管理システムや大手通信会社のショッピングサイト、企業内のプロジェクト管理システムなど、様々な業種のシステム開発を手がけています。主要取引先は東京の企業なので、先方とはスカイプなどのビデオ通話システムなどで情報交換しながら開発作業を進めています。一方で、県内企業のシステム開発を受託することも少なくありません。

特に今、メインで手がけているのが「Ruby」や「RubyOnRails」を使ったWEBアプリケーションの開発です。他にも、自治体など官公庁系の仕事から組込み系の開発まで、それぞれの社員(エンジニア)の経験やスキルを活かしながら、いろんな仕事を請け負っています。

ー渡部さんは具体的にどのような業務を。
メインの担当業務はWEBアプリケーションの開発ですね。言語は「Ruby」や「Ruby on Rails」を使っています。受託が基本ですが、案件によっては私たちから「こんな機能があれば便利ではないか」などと提案し、クライアントと一緒につくり上げるような仕事もあります。

また、現在は新しく入社した社員にプログラミング技術を教えたり、プロジェクトの進行管理を行うなどチームリーダーとしての役割が大きくなってきています。チームの中でどう役割分担して作業を進めるか。そういうスキルも身につき、仕事の幅が広がりましたね。入社前に思い描いていたように、歯車ではなく中核的な役割を担うようになってきていると思います。

ー使う言語も働く環境も大きく変わる中で、どう適応したのでしょうか。
「Ruby」は使ったことがないわけですから、最初は大変でしたよ。ですから、入社後の約1年間は派遣で東京の企業に常駐し、「Ruby」を使ったWEBアプリの制作に携わりました。勉強しながら技術を蓄積する期間にしたんです。さらにその後、別のWEBアプリケーション系の会社にも数カ月常駐しました。そこでのシステム開発が一段落したタイミングで、その開発案件を島根に持ち帰り、ニアショア開発として継続する。最初はそんな動きをしながら、技術を習得していきました。

ー創業から5年以上が経過しました。事業は順調ですね。
若くフレッシュで、会社や島根に対する貢献意欲の高い社員が多いので、そうしたチームワークは成長要因の1つだと思います。現在20人ほどいる社員の大半は島根出身で、平均年齢も20代後半。中には、埼玉出身の若いIターン女性社員もいます。歳が近いので気軽にコミュニケーションが取れますし、いい雰囲気の中で仕事ができています。新しいメンバーもどんどん加わっており、今春は新卒採用でも4人が入社しました。業務以外でも社員同士の仲はよく、仕事後に飲み会やカラオケなどに出かけることも多いですよ。

第一子が誕生。Uターン生活”第二幕”へ

ーUターンして改めて感じた島根のよさは何でしょうか。
昔は都会に比べて人口が少ない、つまり”田舎”であることに物足りなさを感じていたんですが、久しぶりに帰ってきて生活してみると、むしろそれが快適ですね。例えば、通勤は東京時代の満員電車から、今は車通勤に変わり時間も随分と短くなりました。残業時間も減ったので、平日でも自分のプライベートの時間を確保しやすくなりましたね。休日も同じように、のんびりドライブしたり、バーベキューをしたりして楽しんでいます。個人的には、宍道湖から眺める夕日が、オススメのパワースポットですね。

実はつい先日(8月)、第一子が生まれたんです。実家で妻と両親、妹、祖母と暮らしていたんですが、新たに1人加わり”7人家族”になりました。今後の子育てのことを考えると、ここには両親をはじめ身近に助けてくれる人がたくさんいるので、とても心強いですね。

ー仕事の面では、どんな将来像を描いていますか。
今後は、チームリーダーとしてマネジメントの力をさらに身に付けていきたいですね。後輩をたくさん育てて、チームの人数を増やし、大きい仕事を任されるように。そして会社そのものをどんどん発展させていきたい。創業メンバーの1人として、そういう思いが強くあります。

また今、県内のプログラミング教育のイベントなどにも関わっているんですが、2020年度の小学校での必修化に向けて、子どもたちにプログラミングの楽しさを教えていきたいとも考えています。

私自身はUターンを機に、快適な生活を送れています。仕事の面でもスキルアップできました。島根は都会に比べて人が少ない分、チャレンジできる余地が大きいと思うんです。東京だと大勢の中で埋もれてしまいがちな存在や技術も、ここでは新しいことに挑戦すれば期待や注目を集められるアドバンテージがあります。ぜひ、みなさんも島根へのUIターン転職を検討してみてください。

 

======= 【お知らせ】=======
八雲ソフトウェアは、9月1日(大阪)/9月15日(東京)のイベントに出展します

[本記事は、IT WORKS@島根からの転載です]

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シフトローカル編集部。シフトローカルなメンバーが集まって構成している。

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