移住を希望する地域は関東近郊の地方都市が人気、20〜40代の現役世代が移住に積極的――。移住希望者と全国自治体のマッチングを行う認定NPO法人ふるさと回帰支援センター(東京)が実施した移住希望者への意識調査で、こんな最新トレンドが浮かび上がっている。
調査は同センターが運営する、ふるさと暮らし情報センター(東京)の来場者を対象に2016年1〜12月にかけて実施(有効回答数:6777件)。センターは、移住の希望地域などを尋ねる同様の調査を2009年から継続して実施している。
長野も不動の人気、現役世代の関心高く
今回、移住希望先で最も人気を集めたのは山梨県。2015年は2位だったが、2014年以来の1位に返り咲いた。次いで人気だったのが長野県で、前年の1位から一歩後退。ただ、長野県は調査を開始した2009年以来、常に上位2位にランクインしており、不動の人気を誇っている。山梨、長野の両県は2013年以来、4年続けて上位2位を独占しており、人気の高さが目立つ。今回、両県に続く3位には静岡県が入り(前年は4位)、都心からアクセスのいい地方都市に人気が集中している。
このほかでは、5位に福岡県、7位に大分県、10位に宮崎県などと上位20位に九州が6県もランクインしたほか、広島県(4位)、岡山県(6位)も上位に食い込むなど、西日本の人気の高さをうかがわせる結果となった。
一方、同センターの利用者や相談件数は毎年増加しているという。2016年の相談件数は、前年の2万1584件から2万6426件へと約20%増加。同センター主催の相談会やセミナーの実施回数が大幅に増えたほか、各県が全市町村を集めた大規模なセミナーや近隣圏との合同セミナーを積極的に開催したことで、潜在ニーズを取り込んだ影響とみられる。
また、2016年のセンターの利用者は20〜40代が68%を超え、現役世代による移住への意識が定着していることもわかった。特に30代が28%、40代が22%超となり、一定のキャリアを積んだ世代の関心が高い。実際、移住先を選択する条件として、今回は「就労の場があること」が「自然環境が良いこと」を初めて上回ったという。関東近郊の地方都市に人気が集中していることからも、従来の単なる「田舎暮らし」ではなく「地方でキャリアを描く」という新たな流れが生まれているようだ。
今後もこうした傾向は続くものとみられ、都心のIT企業などに勤めるエンジニアにとって「地方でキャリアプランを描く」という選択肢はさらに広がりそうだ。
【参考】過去3年間の移住希望地域上位5県