産学官連携の”AI観光コンシェルジュ”。別府市で実証実験開始へ

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IoTプラットフォーム「beaconnect plus(ビーコネクト プラス)」をはじめWEBシステム・アプリ開発などを手がけるアジアクエスト(本社:東京)が、事業所を置く大分県別府市を舞台にAI(人工知能)を使った観光案内サービスの実証実験に乗り出す。増加する外国人観光客へのサービスを充実させ、地域を盛り上げたい考えだ。

湯煙があちこちから上がる温泉街。別府ならではの独特な光景だ(写真提供:アジアクエスト)

「大分県IoT推進ラボ」のプロジェクトに認定

実証実験プロジェクトは、県が推進する「大分県IoT推進ラボ」のプロジェクトとして認定された。アジアクエストのほかに昭文社(同)とゆこゆこホールディングス(同)、立命館アジア太平洋大学(APU)、さらに別府市と一般社団法人別府市産業連携・協働プラットフォームB-biz LINKの協力を得て行う産学官連携の取り組みだ。

具体的には、多言語で観光案内をするスマートスピーカー「AI観光コンシェルジュ」を市内の観光案内所や温泉・宿泊施設などに設置し、訪日外国人に観光に関する情報を提供する。タッグを組む昭文社は訪日外国人向け観光アプリ「DiGJAPAN!」、ゆこゆこホールディングスは温泉旅行マガジン「ゆこたび」を手がけるなど観光情報に精通しており、情報面で両社のノウハウを活用する。

別府市内にキャンパスを構えるAPUとは国際経営学部の藤井誠一教授と協力し、学生から改善策やアイデアを募り、サービス向上につなげる。APUはアジア各国の外国人留学生が多数在籍しており、約半数に上る3000人ほどが外国人の学生。中国や韓国、ベトナム、インドネシア、タイ、バングラディッシュなど出身地は90カ国・地域に迫る。多国籍から集まる特徴を活かし、より精度の高いサービスにするのが狙いだ。

アジアクエストは、今春に「別府Lab」を開設。UIターンの中途採用を進めるとともに、県や市、APUなどと連携しながら、IT産業や地元経済を盛り上げるようなプロジェクトの実施・参画を模索していた。

4月末、アジアクエストは大分県庁で知事や別府市長とともに進出表明を行った。

来年のラグビーワールドカップで実用化目指す

日本を訪れる外国人観光客は増加の一途にある。東京などの首都圏だけでなく、近年は地方都市への流入も顕著で、別府市も昨年の外国人観光客は前年から約4割増えたという。一方で、現地の受け入れ態勢は整備が追いついていないのが現状だ。例えば、大分県では宿泊業に関わる職種の有効求人倍率は4.83倍(2017年度)と人手不足に陥っている。県は来年開催のラグビーワールドカップの会場にもなっており、受け入れ環境の整備が課題となっていた。

一般的に外国人観光客への対応では語学が堪能な人や外国籍の人員が必要になるが、今回はスマートスピーカーを使うことでスタッフの負荷が減り、より効率的な情報提供が可能になるとの期待がある。また、自治体などは独自に観光アプリを開発するなどしているが、スピーカーであれば利用者がアプリをダウンロードしたりする手間も省けるとしている。AIの学習精度を高めれば、国籍や性別、年齢など属性に合わせた情報を提供できるようになり、観光客の満足度を高めることができそうだ。

今後は10月までにスマートスピーカーの開発をはじめとする準備を終え、11〜12月にかけて別府市内で実験を開始する予定。その後事業化が可能と判断されれば、来年3月以降に別府市内、および大分県内にも広げ、同年開催のラグビーワールドカップでの実用化を目指すとしている。

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