佐賀でも刺激的なIT・WEBの仕事ができる。Uターン者と5人の経営者が体験と魅力を語る

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佐賀県でも、刺激的でやりがいのあるIT・WEBの仕事ができるのかーー。県内に支社を構える経営者やUターンした人と移住について語り合う「さがIT UIターンフェア」が10月14日、都内にあるNPO法人ふるさと回帰支援センター内で開催された。東京でIT関連企業などに勤める20〜30代を中心に20人ほどが参加し、佐賀での仕事や暮らしについて移住のイメージを膨らませた。

IT・WEBに特化した佐賀県主催の移住セミナー。20〜30代を中心に、参加者は経験者らの話に熱い視線を注ぐ。

「都市の暮らしやすさ」で全国1位

暮らしやすさ全国1位は佐賀市ーー。野村総合研究所が今年7月に発表した「成長可能性都市ランキング」。その中の「都市の暮らしやすさ」の項目で、佐賀市が1位に認定された。人口1人当たりの医療機関や小売、飲食店数が多く、また生活コストが全般的に低いことなどが理由という。では、ITとの関連性についてはどうなのだろうか。

今回のイベントを主催した佐賀県の古賀大輔・企業立地課企業誘致担当係長によると、数年前からITやWEB企業の誘致に力を入れており、支社を置くなど進出する企業が増えているという。こうした動きをさらに加速させようと、今回初めてITに特化した移住イベントを開催した経緯がある。

当日は、東京のゲーム制作会社を退職してUターンした男性と、佐賀市を中心に県内に支社を置く5社の経営者を招き、それぞれ佐賀での暮らしや会社の魅力を披露。さらに、グループに分かれて参加者と経営者らが直接交流するなどした。

給料は少し減ったが、生活レベルはかなり上がった

「刺激のある仕事ができなくなるのではないか。最初はそんな不安もあったが、今はプライベートも含めて充実している」

そう話すのは、有田町出身で6年前にUターンした福島史也さんだ。福島さんは地元の高校を卒業後、大阪の専門学校に入学。その後は名古屋と東京のゲーム制作会社でゲームプランナーとして働いた。東京での仕事は刺激的で満足していたが、「その経験を地元の佐賀に還元できないかだろうか」と将来的なUターンをずっと考えていたという。

「どうせ戻るんだったら、まだ結婚していない自由がきく独り身のうちに」。そう思い、26歳のときにUターンを決意した。東京の大手企業や首都圏の自治体などから、WEBサイトの制作業務を請け負うなどしているEWMファクトリーに入社。同社はWEBサイト制作のほかにも、県内でカフェの運営やモノづくりに関するイベント・セミナーを主催するなど様々な事業を展開している。福島さんも当初はエンジニアとしての業務が中心だったが、現在はソーシャルデザイン事業部のリーダーとして、地域づくりに関わるような事業の企画に携わっている。「もともと自分がつくるもので誰かがワクワクしたり、楽しんでくれたりする姿を見るのが好きだった。(ゲーム制作とは異なり)アウトプットのかたちは変わったが、やりたいことができている。ITやWEBの技術を還元することで、地域を活性化させたい」と充実した様子を見せる。

東京のゲーム制作会社を退職してUターンした福島さん。仕事と暮らし、それぞれ充実した時間を過ごしているという。

私生活の方は、どうなのだろうか。Uターンした当初は独身だったが、今は結婚し、妻と子供の3人暮らしだ。佐賀市内にある賃貸マンションの間取りは2LDK。家賃は東京と比べ物にならないほど安いという。「給料は東京で働いているときより若干減っているが、生活レベルはかなり上がった。休日も自然の中で遊ぶことが増えたので、あまりお金は使わない」と笑顔で話す。

都会と田舎、どちらが魅力的かーー。よく聞かれるこの問いかけには、「それぞれによさがある」と答える。「東京には新しい情報がたくさんあるし、仕事も遊びもいろんな種類がある。人が多い分、素敵な出会いも多い。一方、佐賀は自然が豊かで、落ち着いた生活ができる。子供を伸び伸び育てられるし、住むにはとてもいい環境だ。今、佐賀で暮らしすさと刺激的な仕事を両立できている」

豊かな自然、生活コストの安さなど、佐賀ならではの魅力は少なくない。

実直な県民性、行政のITへの熱い思い

一方、経営者から見た佐賀の魅力は、どんなところにあるのだろうか。5人の経営者からは「真面目で実直な人が多い」「行政がIT産業化を推進している」「地域住民と近い距離で仕事ができる」といった声が上がった。

佐賀市内に支社を構え、インターネット広告運用などを手がけるキーワードマーケティングの滝井秀典代表は、真面目な県民性が魅力的に映ったと話す。インターネット広告運用の業務は緻密な分析や作業が求められるが、未経験で採用した計10人の社員は1人も離職せず、高度な業務を担えるまで成長した社員もいるという。

また、SEO対策やWEBマーケティングツールを開発するなどしているFaberCompanyは、IT産業化への行政の積極的な姿勢に心を動かされた。昨年9月に支社を開設し、地元の高校で出前授業を行うなど地域との結びつきも強い。現在は東京本社のサポート業務が主体だが、稲次正樹・取締役社長COOは「将来的には主力事業の一部移管を視野に入れている」と話す。

「行政や地域住民と近い距離感で仕事ができる。これは地方特有だ」。こう話すのは、EWMファクトリーの友納健一郎代表だ。佐賀市に進出したのは約10年前。今ではWEBサイト制作の主要部隊は佐賀に置き、東京本社は営業業務が中心の体制になっているという。

このほか、佐賀市に拠点を置きソフトウェア開発などを手がけるアイセルの草川麗子社長、各種システム・ネットワークの構築・運用業務などを唐津市で展開するココトの西牧哲也社長も、佐賀の魅力や自社の取り組みを熱っぽく語った。

県内に支社を置く経営者や担当者を囲むようにして、参加者が質問を投げかける。お互い活発な意見交換ができたようだ。

イベントはその後、参加者が5つのグループに分かれ、それぞれ経営者を囲むようにして交流。仕事内容について詳しく尋ねたり、現地の交通事情や家賃などの生活コスト、また休日に楽しめる観光スポットなどについて質問するなど、活発な情報交換が行われた様子だった。

古賀さんは今回のイベントについて、「単に人材を募集するだけではなく、実際に住む人との接点や経営者とのつながりを大事にしたいという思いがあった。『こんな佐賀の魅力もあるんだ』と知ってもらえると嬉しい」と話し、参加者との関係構築に期待を示した。

About Author

フリーライター/1983年神奈川県生まれ。2008年〜化粧品専門誌の記者を経て、2016年フリーランスに。現在、東北復興新聞(発行:NPO法人HUG)のほか、企業のCSR・CSV、ソーシャル・ローカルビジネス、一次産業、地方創生・移住などをテーマに取材〜執筆活動している。

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