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UIターンというと、東京などの都市部から地方への移住が多いが、今回取材した藤井さんは今年4月に香川から東京へ移住し、現在、東京のベンチャー企業でITエンジニアとして働いている。香川では高専の電子・情報系学科の教員として、7年間に渡り多くの生徒たちを育てていた。香川から東京という移住だけでなく、先生からITエンジニアという大きな転身を決意したきっかけはなんだったのだろうか。

 

システム工学科で研究プロジェクトやワークショップを推進した7年間

今年の11月で35歳になるという藤井さんが、転職を考え始めたのはいまから約2年前、33歳のときだった。藤井さんは東京の大学院を卒業後、香川高専の教員として着任。香川県に家を借り、車で30分ほどかけて職場に通っていた。実家には高速で40分ほどで帰る事ができるので便利だった。高専では電子・情報系学科であるシステム工学科で、いくつもの研究プロジェクトやワークショップを推進した。iRobot社製品の日本総代理店セールス・オン・デマンド社と共同で行った「ルンバアイデアコンテスト」、粟島の船乗りたちの歴史を掘り起こす「海の学びワークショップin粟島」のほかに、コンピュータ将棋選手権やロボコンへの出場を通して多くの生徒たちを育成してきた。藤井さんが教えた卒業生のうち、毎年2~3人はIT企業へ就職が決まっていったという。

 

企業経験がない自分への焦り「狭い世界しか見えていないのでは?」

先生になって7年が経過した33歳の頃、自分のキャリアの先を考え始めた。立場が上になればなるほど、関係各所との調整や事務仕事が増えていく。自分はその仕事がやりたいんだろうかと自問自答するようになった。「尊敬する先生はたくさんいましたが、彼らをロールモデルとして考えたときに、自分はやっぱり現場にいたいという気持ちが強かったんです。それに加え、生徒達と接するときに、自分に企業経験がないことがいつも引っかかっていました。技術的なことはいくらでも伝えられるのですが、いざそれが実際の仕事の現場でどうなのかという生の経験は自分には伝えられない。生徒はやっぱり企業経験をもつ先生の話を喜ぶんですよね。研究職はニッチな世界でもあり、もしかしたら企業経験がない自分が見ている世界は狭いんじゃないかという焦りが常にありました。高専で7年が経ち、33歳になった自分を振り返ったとき、一旦企業経験を積んで50歳くらいになったら先生に戻るというキャリアもありなんじゃないかと思ったんです」。

大阪は撃沈。なかなか決まらなかった転職先

先生としてのキャリアへの疑問と、企業経験をつけたいという想いから、藤井さんは転職を意識し始めた。これまでの香川高専での経験を活かすべく、地方創生や教育をテーマにしたIT企業を探した。「岡山からさほど遠くない大阪はどうだろうと思いましたが、仕事が全然ありませんでした。オファーがくるのは東京の企業ばかり。いまの会社に決まるまで、何社か面談をしましたが、なかなか決まりませんでした」。

転職活動を始めて1年ほど経った頃、ヘッドハンターから現在の会社を紹介された。藤井さんが希望していた地方創生とITをテーマにした企業だった。代表と意気投合し、転職が決まった。

東京に移住するまでの半年、香川からリモートでプロジェクトに参加

入社は4月と決まったが、それまでの半年間は教員の就業時間外を使って、外部ITエンジニアとして香川からリモートで社内システム開発のプロジェクトに参加した。週1回、ハングアウトでチームメンバーと会話をしながら開発を進めた。「東京に移る前のこの半年間は、自分にとっていい準備運動になったと思います。教員からITエンジニアへ転職し、実際に自分が開発現場でやっていけるのか不安でした。高専ではプロジェクト統括はやっていましたが、プログラムの実装はしていなかったんです。『本当に自分にできるんだろうか』『勉強しないとまずい』と不安でした。でもリモートで参加することで、東京に移る前にこちらの仕事の進め方を理解できたのはよかったですね。さらにチームメンバーとの関係をつくることもでき、安心につながりました」と藤井さんは語る。

そして今年の4月、ガリレオスコープ株式会社に入社。現在は社内のエンジニアチームの1人として、Ruby on Railsを使い、受託システムの開発プロジェクトを複数担当している。

 

東京には車がなくても家族で出掛けられる便利さがある

藤井さんは東京には妻と子供と一緒に移った。住まいは子育てをしやすいと評判の練馬に決めた。「僕、もともと自然がそんなに好きじゃなくて、どちらかというと都会のほうがいいんです(笑) 香川にいた頃はどこにいくにも車で、いつも僕が運転していました。こちらに移って感動したのは、電車やバスが便利なことですね。車がなくても家族でいろいろなところに気楽に行けるので、子供を抱っこしたり、手を繋いで歩く時間が増えました。それがうれしいなあと思っています。香川で車の維持費にかかっていた分が東京の家賃になったので、生活はあまり変わらない印象です。それからわかる方はわかると思いますが、自然が豊かな地域って公園がないんですよね。その点、練馬は公園も多く緑も豊かで子育てに安心です。歩いて行けるスーパーが多いのもうれしいですね。野菜や魚、肉はもしかして香川より安いんじゃないかと思うこともあります」。

現在家族で練馬を満喫しつつも、奥様は東京に移る準備が大変だっただろうと当時を振り返る藤井さん。拘束時間が長く土日もない高専と違い、土日が休めるいまの仕事はご家族にも好評だという。

 

ITエンジニアとして、地方を元気にする事業に挑戦したい

香川から東京へ。新しいキャリアのスタートを切った藤井さんは、将来の夢を語った。「いま日本のあちこちにみられる元気を無くした地域を活気づけるような、地方創生に関連した事業をやりたいと思っています。UIターンもそうですが、人が自由に動くことでいろんな地域が盛り上がっていくといいですよね。ゆくゆくは高専時代のネットワークも活用して、たくさんの人と場所を元気にしていけたらと考えています」。

会社名
ガリレオスコープ
募集職種
システムエンジニア・プログラマー
勤務地
東京・麻布十番/沖縄・みなとオフィス(希望に応じる)
給与例
30歳例550万円
35歳 800万円
一言PR
のびしろは無限大。自分を成長させるベストな環境です。
URL
http://www.galileoscope.co.jp/

About Author

インコを愛するフリーライター。趣味は格闘技。いつまで経っても強くなれない悔しさを、仕事へのエネルギーに変えています。