Share

インバウンドで盛り上がる沖縄発のアプリ!

最近、「インバウンド」というワードが注目を集めています。日本では近年、訪日旅行者が急速に増えていることから、ホットなキーワードとして耳にする機会が増えました。

そんなインバウンド需要に応えるのが、外国人旅行者の間で人気の「Payke」というアプリです。Paykeは、商品のバーコードをスマホにかざすと、利用者の母国語で商品の説明が閲覧できるというスグレモノ。これを開発したのは、いままさにインバウンドに沸く、日本を代表する観光県・沖縄に本社があるITベンチャー企業、『株式会社Payke』です。

Paykeが入居するのは、沖縄県那覇市にある「なは産業支援センター(愛称:メカル ヨン_ゴ)」の一室。こちらは那覇市が運営するインキュベーション施設で、IT関連やものづくり系などの成長性の高い企業が十数社入居しています。建物の中はさながら大学のキャンバスといった雰囲気!ここでさまざまなイノベーションが生まれていると思うと、なんだかワクワクしてきます。

さあ、どんな開発風景が繰り広げられているのやら!?オフィスを訪れ、ドアを開けたその瞬間、見えたものとは!?

…目に飛び込んできたのは、ベビーベッドでスヤスヤ眠るかわいい赤ちゃんの姿。ちなみにオフィスのBGMは、オルゴールで奏でられる「おもちゃのチャチャチャ」のメロディー♪ お話を伺うと、お子さんのいるメンバーに、育児をしながら午前中だけでも来てもらえたらという会社の意向で、赤ちゃん連れ出社が実施されているのだそう。

Payke・沖縄

「特に決まりごともないですし、みんなで話して問題がなければ、自由にやる形にしていますよ!」
そう話すのは、今回インタビューさせていただいた、株式会社Paykeの取締役CTO 花城昂平さん。そのやさしい笑顔(そして甘〜いマスク!)の中に、メンバー思いで、かつ柔軟な会社のカルチャーが垣間見られます!

ベンチャースピリッツ溢れるエンジニアCTO!

Payke・沖縄

まずは、花城さんがPaykeへジョインする経緯と、エンジニアとしてのご経歴について伺いました!

――花城さんはもともと開発系のお仕事を?

花城さん:
「エンジニア歴でいうと、10年ぐらいです。沖縄県内の大学を卒業して、やりたいビジネスがあったので開発者を探してたんです。で、開発者が見つからなくて、人がいなくて、お金もなくて。もうやるしかなかったので、本を見て試行錯誤しながら自分で開発をしたというのがきっかけです」

――そこから今まで、どういうものを作られてきたんですか?

花城さん:
「最初に成果報酬型の求人サイトを作りました。自作して、そのサイトに出稿してくれる企業を探して営業したんですけど、なかなかうまくいきませんでした。でも逆にその時、作るのが面白いなと思ったんで、その作ったものを持って就職活動をしたんです。本見て、今までで一個しか作ったことないんですけど、ちょっと開発の経験あります、みたいな(笑)」

――ナイスな方向転換ですね!その後は?

花城さん:
「東京に本社がある会社に入ることができて、開発者…サラリーマンとして2年弱、経験を積むことができました。そこはアドサービスを作っている会社で、サーバーサイドの開発の技術を教えてもらいながら知識をつけてから、知り合いと独立しました。そして4年ぐらい受託開発の会社をやった後、フリーランスに。その1年後にPaykeと出会って、今に至る、というかんじですね」

花城さんは大学時代、マーケティング専攻で、ビジネスや起業への思いが強かったそう。それが巡り巡って、開発者としてベンチャー企業を牽引する立場に。ベンチャーマインドは結果、花開いたというわけですね!

スピーディーに進んだアプリ開発

Paykeに花城さんがジョインしてから、アプリ開発は一気に進んだそうです。当時の状況について、伺いました。

Payke・沖縄

――アプリ開発のご経験は?

花城さん:
「今まではWEBの比重が高くて、アプリはたまに作るぐらいだったんですけど、なんでもできるフリして仕事を受けてた、ってかんじです(笑)」

――実際はどんな流れでアプリ開発を進めたんですか?

花城さん:
「開発の話が7月にきて、8月9月で作って、10月ぐらいから、テスト、みたいな流れだったと思います。3か月後にはちぐはぐなシステムだったりはするんですけど、形になりました。なので今、みんなで苦労して、いろいろ変えてます」

――花城さんのご担当は?

花城さん:
「僕は、サーバーサイドをメインでやっています。サーバーには商品データーベースを収集して集めて来たものが溜まっていくような仕組みになっていて、そこを管理しています。商品データベース自体は、10万商品以上のデータが入っています。1年前は1万弱ぐらいだったので、めちゃくちゃ増えましたね」

Payke・沖縄

需要増への対策について

リリース後のPaykeの利用者数は、今もどんどん増え続けています!このような状況で、どのような対策を講じているのか、伺いました。

――インバウンド需要の増加で、サーバーや開発負荷が上がることが想定される中、対応策などはありますか?

花城さん:
「今まさにその対応を進めているところです。どんどんログが溜まってきますので、スキャンされた時のユーザー属性とか、どの商品がいつどこでスキャンされたかというのを集めて、それがどんどん肥大化しているので、それをまずレプリケーションして負荷対策も進めていくところです」

Payke・沖縄

――具体的には?

花城さん:
「ログ自体を、早く正確にどんどん貯めていくために、今はMySQLを使っているんですけど、そこから『Elasticsearch』…簡単にいうと、もっと早いログ収集に特化したオープンソースの全文検索エンジンにどんどんぶち込んでいくような設計をして、これから実装していくところです」

――すでにMySQLだと限界を感じているかんじですか?

花城さん:
「そうですね、今かなりの毎月スキャン数(トラフィック)がありますので、明らかに最初作った時の設計ではやっていけないので、そっからどんどん移行していく、っていう」

――サービススタート当初のインタビューを拝見すると、スキャン数は2万回とありました。ずいぶんな伸び具合ですね!

花城さん:
「感覚的には平均1日2万商品ぐらいがスキャンされるんですけど、2月の春節の時に、プロモーションもうまくバチっとはまって、ユーザー数とインストールがガンと増えたんです。そのときは、1日で10万商品以上スキャンされたと思います」

Payke・沖縄店頭設置型のPayke。来店した人がそのばで商品のバーコードをスキャンできる

――開発側として、その急激な伸びっていうのは…

花城さん:
「嬉しかったですし、でも正直いうと、結構ヒヤヒヤで(笑)」

――春節の伸びは、想定内だったんですか??

花城さん:
「いや、覚悟してるつもりではあったんですけど、「想定以上」でしたね。でも幸い、サーバーが落ちることはなかったので、今後こういうことがあっても大丈夫なようにってことで、いい経験になったかな、と」

――スケーラビリティはどう確保されていますか?

花城さん:
「簡単にいうと、『スケールアウト』だと思っています。サーバーを複数置いて、同じようにDBを同期させて、同じデータがあるような状態を作って、たくさんアクセスが殺到してもそれを分散できるような形でインフラを構築していくことが大事かと思っています」

 

チーム開発について

現在、Paykeのエンジニアは3名体制。基本的には全員が全部を触れるようにしつつ、ある程度の役割分担をしている状況だそう。また当初は外注している部分もあったものの、1年前からすべて内制化へ。その背景として、アプリは頻繁にアップデートする必要があるので、スピードを短縮するためには内制した方がいい、という結論に至ったといいます。チームでの開発は、実際どのように進められているのでしょうか?

Payke・沖縄

――チーム化の課題などはありますか?

花城さん:
「チーム開発というのは個人でやるのとは違って、連携していく部分でコミュニケーションのコストがかかりますので、そこをどううまくやっていくかいうのは、今までになかった苦労ですね。意識していることとしては、基本的に書く人やコードの品質は一定に保たないといけないと思うんですけど、書く人は、自分で考えて書いた方がいいものができる、と思っています」

――個人のパフォーマンスを重視するということですか?

花城さん:
「基本的な仕様であったり方向性は密に話し合って、というふうには心がけているんですけど、実際のコードは本人が考えて書くのがいいと思っています。他のメンバーが僕がわからないことがわかる、ということも多々ありますので。今後増えていく人たちに関しても、基本的な仕様であったり、システムの構成というのはもちろん、こちらでレクチャーするつもりではいますが、実際の開発フェーズに入ったら、個々の責任といいますか、自分なりに目的意識を持って書いていただきたいな、と」

――結構エンジニアに求めるハードルが高そうですね

花城さん:
「そうかもしれないですけど、そうあるべきだと思います。でも今の所は、今のメンバーや体制についてはいいかんじだと思います。何でそう思うかというと、僕だったら分からなかったことも、実際に書いてくれてる人たちが解決してたりするので、それはそういう考え方で動くメリットだと思います。(メンバーは)優秀です」

――今後も開発メンバーをどんどん増やしていく方向だと思いますが、どんな方だったらいいと思いますか?

花城さん:
「大切にしたいなと思ってることでいうと、今持ってる技術的なスキルっていうよりも、その問題を解決して、どうやったらうまく実装できるか、とか、ユーザーの役に立つかっていうのを自分で考えて、勉強して、作っていけるような人に入っていただけたらと思っていますね」

沖縄でのエンジニアライフとは?

現在のPaykeのメンバーは、沖縄オフィスが7名、東京オフィスが8名の、計15名。事業は拡大の一途をたどっていますが、開発拠点はあくまでも沖縄で、という思いがあるのだとか。その理由や、沖縄で開発を進めるメリットなどについて、伺いました。

Payke・沖縄

――花城さんは沖縄出身ですが、働く上で沖縄という場所を選んだ理由などありますか?

花城さん:
「このPaykeに入る前も、入ってからもなんですけど、基本的にITの仕事って、案件自体は東京の仕事を受けたりしてるんですけど、だからと言って東京に行く必然性がないというか、同じことが沖縄でできるなっていうのが個人的な思いとしてありますね」

――なるほど。ではむしろ、沖縄で事業を展開することの利点は何でしょう?

花城さん:
「率直な感覚でいうと、東京はとにかく移動が大変!家賃も高いですよね。それと比較すると、仕事自体はハードでも、のんびりとした環境で仕事した方が断然効率がいいと思います。車で好きな時間に、仕事のことをあれこれ考えながら移動できるのも自分的にはすごく大きいです。開発モードに入ったら、邪魔されたくないというか。混雑した電車だと、考えが一旦途切れるし、疲れますよね。…て考えると、同じ仕事ができるんだったら、沖縄の方が暮らしやすいな、と」

――確かに。では逆に、デメリットと感じることはありますか?

花城さん:
「エンジニアのコミュニティは、どうしても向こうのほうが活発に色々集まったり情報交換しているので、そこは沖縄は弱いかもしれないですね。とはいえ、必要な情報はネット上で転がっていたり、あとは書籍で必要な技術は学べるので、そこまで致命的なことではないかな、という思いはあります」

――ちなみにお休みの日は何をされているんですか?

花城さん:
「休みの日は寝ています(笑)ただここ1年ぐらい、趣味らしい趣味ができて、ゴルフをやっています」

Payke・沖縄

――最後に、沖縄へのUIターンを考えているエンジニアに向けて、一言お願いします!

花城さん:
「日本語も通じるんで、全然迷うことなく来ていただいたら、今まで通りの生活ができますので!(笑)

花城さん、ありがとうございました!!
これからのますますのご活躍、期待しています!!

さいごに

インバウンド需要のニーズを満たすアプリ開発が、沖縄の会社で展開されているということ。これは、地方創生の観点から見ても、とても理想的な形と言えます。

地場産業の活性化をITで後押しする会社が各地でどんどん増えることにより、エンジニアのUIターンはますます選択肢が広がります!「地方×IT」が盛り上がるほど、エンジニアの活躍できる場が比例して増えるというもの。う〜ん、この流れ、とってもワクワクしますね!

次のPaykeは一体どこで生まれるのでしょうか!?
今後も引き続き、地域性を生かしたITベンチャーの動向に注目していきましょう!

Payke・沖縄

▼お話を伺った方

株式会社Payke
沖縄オフィス
取締役CTO 花城昂平さん

http://payke.co.jp/

About Author

沖縄のクリエイティブエージェンシー・株式会社HUVRID所属ライター。 1974年生まれ。大学卒業後、百貨店勤務を経て楽天株式会社にて楽天市場事業ECコンサルタント、広報職を経験。その後フリーライターとしてコラム執筆や取材記事を多数手がける。同時にフリーランスとして、PRコンサルタント、クラウドファンディングサイト立ち上げ等に従事。 2015年に沖縄出身の夫に帯同し、沖縄へ移住。つまり自身が東京→沖縄のIターン組。 無類の鳥好きで、現在セキセイインコ2羽のお世話係(別名、下僕)。自慢は飼い鳥に関する獣医用の専門書と文献のコレクション。個人で「インコメディア」を立ち上げのため、目下奮闘中。 NPO法人TSUBASA認定バードライフアドバイザー2級取得 / ジャパンビアソムリエ協会認定ビアソムリエ(BASIC)取得 / シナリオセンター東京本校・シナリオ作家養成講座修了

Leave A Reply